ソフトウェアの多機能さとシンプルさについて思ったこと

ちょっと前の記事ですが、「ITPro-どんな機能をそぎ落とすかが重要」に、米ツイッター共同創業者のエヴァン・ウイリアムスのインタビュー記事が書かれていました。

パッケージソフトウェア開発(エンタープライズ向けですが)に身をおいている1人として、けっこう考えさせられる部分がありました。

 多かれ少なかれ成功したプロダクツに明確に共通するのはすでに存在しているものの要素を持っていることだ。技術というものには新たな何を付け加えることで改善しようとしがちだ。さまざまな新機能の登場だ。ブログはどんどん複雑になってきた。

 だけどツイッターは、ブログに似てはいるけど、そこからいろいろなものを取り去ったプラットフォームといえる。タイトルもコメントもトラックバックもないし、フォーマッティングもできない。画像も動画もない。ほとんどの人が使ってもいないSMSの要素を加えただけだ。

上記の話に続けて、初期のGoogleはYahooから検索以外の機能は全てそぎ落としたようなものだという話が続いています。
もちろん、Googleの成功の要因は検索機能の中身だったわけですが、「機能」という観点ではそうですね。
別のブログでは、以下のようなことも書かれています。

Life is beautiful: ユーザーに尋ねても必ずしも正しい答えは返ってこない」より:

ごく一部のヘビー・ユーザーばかりが声がでかく、「今の機能で十分、これ以上複雑にしないで欲しい」というユーザーは何も言ってこない(こういう人たちのことをサイレント・マジョリティ)という状況にあったからこんなことになってしまったのだ。

 「こんな機能が欲しい」と言ってくるユーザーは、本当はそんな機能が欲しいのではなく、そんな機能を使いこなしている自分を想像して満足に浸っているだけかも知れない。

「機能をつけすぎるとシステムが複雑になって、それはそれで喜ばれない」というのはもっともなのですが、機能をつけないことを実行するのは難しいですよね。
一般消費者向けとエンタープライズ向けでもまた違ってくるとは思いますが、エンタープライズの世界では得てして、ユーザー企業が製品を選定するにあたって、機能比較表を作ることがあります。
そうすると、機能の中身とかそのアプリケーションを使ってどういったことが出来るかの前に、機能の有無(というか多寡)によって受注/失注が決まってしまうというケースがあります。
Microsoftのオフィスアプリケーションについても、「多機能すぎる」と言う意見がある一方、マイクロソフトは「全ての機能を使っているユーザーはいないが、それぞれのユーザーが使っている機能は異なっている」という主張をしています。
なかなか難しい問題で、私自身いろいろ考えるものの答えが出ていません。


そして記事の最後は、一般の消費者向けインターネットに関して言えば、機能的な差は無くなってきていてデザインが重要になってくると言う話で締めくくられています。
例として、時計の話が挙げられています。

 時計産業を見るといい。昔は、正確さや性能や技術などの理由で時計を選んでいた。スイスの時計会社は最高の時計職人を集めたから世界で一番になった。今、特別な人間でもなければ、時間が正確かどうかで時計を選ぶことはない。すべての時計が必要十分に正確になっているからだ。重要になっているのはデザインで、機能の持つ意味は小さくなっている。

時計の場合はインターフェースがかなり統一されているし、買い替えに伴う移行のコストが全く無いということが要因で、たとえ一般消費者向けでもソフトウェア・サービスの世界では同様にはいかない。。。などと、無粋なことを言ってしまってはいけませんね。「一般消費者向けインターネット」と言っても様々なものがありますが、よくよく考えてみるとあてはまるものもありそうです。

例えばオンラインのRSSリーダーで言えば、私は最初は、はてなRSSリーダーを使っていたのですが、なんか使いにくいと感じてLivedoor Readerに乗り換えました。
ただMixiなんかだと、マイミクの存在があるので、デザインが気に入らなくても他に乗り換えるってのは無いのかなとは思います。とはいっても、この場合も初期のユーザーの獲得の際にはデザインが重要、とは言えるのかもしれません。

あとは、オンラインの証券会社のサイトなんかだと、会社によって使い勝手はまちまちですね。私は、3つの証券会社の口座を持っているのですが、1番使い勝手のいいところをメインに使っています。そこがたまたま、平均的には1番手数料が安いというのもあるのですが、特定の条件下では他のところの方が安いとわかっていても、1番使いやすいところを常に使っています。

ソフトウェアのコモディティ化オープンソース化というのが最近の流れではありますが、デザインでサービスを取捨選択するような時代は来るのかどうか・・・
ソフトウェア・サービスの魅力における、デザインの占めるウェイトがどこまで大きくなるかはわかりませんが、重要な競争力であることは間違い無さそうですね。