製品開発における意思決定

物事を決めたりする場合のやりかたって色々とあると思いますが、大雑把に分けてしまうと「ある個人(もしくはごく少数の人)が決定権を持って決めてしまう」というスタンスと、「ある程度の人数を集めた会議体でしっかりと議論をして決めていこう」というスタンスがあると思います。

こと、「製品開発」(ソフトウェアだけでなく、ハードウェア分野も含む)に関して言えば、圧倒的に「個人(少数)で決める」スタンスの方が成功する可能性が高い(実績が多い)のではないでしょうか。
別に、何らかの統計データがあるわけではなくて私の個人的感覚ですが。

多くの人が意思決定に関わると、なんか話が膨らんでいったり無難な結論に落ち着いたりして、スピード感やインパクトのある製品開発って難しいのかな、と思います。
いろんな立場の人が集まれば、それぞれの立場にとって都合のいい方向性を求めてしまいます。その結果、製品の仕様が壮大になってしまえば、スピード感を失ってしまいます。
(営業の人はスピード感を求めるのでは?と思うかもしれませんが、営業の人はスピード感も求めますがそれと同時に競合製品よりインパクトのあるものも求めるので、結果としてはスピード感は2の次になったりします)

何事もバランス感覚が大事だと思うので、工数をかけるところにかかけつつも削るところは削る勇気を持って、ビジネスとして成り立つような製品開発を推進するためには、「個人で決める」スタンスの方が有利なのではないかと思うのです。
それだけの才覚のある人がいれば、の話ですが。

スティーブ・ジョブスなんかは、まさにその典型ではないでしょうか。
iPodの開発に当たっては、ボタンの数とかで開発陣と色々と議論したって話もあります。ジョブスの思惑としては、もっとボタンを少なくしたかったそうなのですが、開発陣からの説得があり今の形になったそうです。そういった意味では、「個人で決める」といっても頭ごなしに決め付けるわけではなくて、各セクションからの声に耳を傾け議論を行って、受け入れるべきところは受け入れる、というのはあるべき姿でしょう。ボタンの数という部分では開発陣の意見に譲歩したとはいえ、ジョブスのそれだけのこだわりがあってこそ、今iPodのインターフェースがあるのだと思います。
単にビジョンを示すだけでなくそこまで細かいところにも気を配りつつ(細かい、というのは語弊があるかもしれません。そういった部分こそが大事なので)、消費者の心をつかむ製品を世に送り出しているというのは、本当にすごいと思います。

それだけのスーパーマンがいなければ、次善の策(?)として、みんなで議論して決めようということになるのかもしれませんが、それで大ヒットしたケースってあるんでしょうかね?(私が知らないだけかもしれませんが。。。)

ちなみに、私が思うもう1つの次善の策は、「規模を小さくする」ことです。
本当は年間数億円の売上になるものを作りたいとしても、それが無理なら数千万円ではどうか。
そのためには、組織の規模も小さくしないと採算が合わないので、事業として独立させる必要はあります。
人数を絞れば、みんなで議論したとしても調整事項や利害関係の衝突は自然と小さくなるでしょうし。
もちろん、小額であってもちゃんと「売れる」製品を作るって簡単なことではないですけどね。